自然治癒力を発揮させる治療法

このように病気を捉えると治療方法は次のようになります。

まずは、真の原因を捉えることです。生活習慣、食生活、考え方などに不調和がないかどうか考えてみます。次に環境汚染を含めて外的ストレスがないかどうか検討してみましょう。

そして、見つかったストレスを一つひとつ外していくことが基本です。そうすれば必ず自然治癒力のスイッチが入り病態は治癒に向かうのです。

帯電障害でいえば、ストレスの一つである静電気を抜いている時間が長ければ長いほど自己治癒力が発揮されて治癒に近づきます。夜、就寝時にアースマットを敷いて寝ることがとても有効であることが理解いただけると思います。

同時に、自然治癒力が高まるようなアプローチも必要です。

私のクリニックでは、五臓六腑のバランスを整える漢方薬をまず初めに使います。肉体的なストレスが多いときには、漢方薬の一種であるプラセンタ注射薬を用いて身体の回復をはかります。一方メンタル的なストレスが多いときには、安定剤の代わりにフラワーエッセンスを調合して心のバランスを整えます。さらには、根本的に身体を変えるためには、気功・瞑想・呼吸法の指導を行います。そして女性に多い冷え症の改善と発汗による重金属などのデトックス目的には、薬石浴による温熱療法を行います。

状況によりにさらにさまざまな代替療法を加えることもありますが、多くの場合はこの基本的な組み合わせで満足のいく効果を得ることが出来ます。

ではそれぞれの治療法について簡単にご説明します。

〇漢方薬

漢方薬は、五臓六腑のぞれぞれの臓器の機能を調整して、バランスを保つのに有効です。

一人ひとりの患者さんの証をみながら、各臓器のバランスを整える生薬を組み合わせていきます。

証とは、望診、聞診、問診、切(触)診などによって、患者さんの体質や病態を総合的に把握する中国医学独自の診断法で、陰陽、虚実、気・血・水の状態などを見極めながら、一人ひとりの証に合った漢方を処方するのです。

当クリニックでは、保険が利くエキス剤を用いています。このため、患者さんの証によっては、根本的な体質に対する薬方(本治薬)と、現在の症状に対する薬方(標治薬)を組み合わせて使うことがあります。

それでは、簡単に使える自律神経失調症状に対する組み合わせを紹介しましょう。

自律神経失調症には、生命エネルギーの源である腎を補う薬方や、全身の気血を補う薬方、血液の滞り(瘀血)をとる薬方を本治薬として、それに加えて、各々の症状に合った薬方(標治薬)を組み合わせていきます。

たとえば、根本原因に働く本治薬には、冷えがある場合は「八味地黄丸」、手足のほてりがあるときには「六味丸」、下肢の力が弱いときには「牛車腎気丸」を基本に置きます。

また、全体的にエネルギーが切れているときは「補中益気湯」、肌につやがないときは「十全大補湯」、瘀血には、「桂枝茯苓丸」を選択します。

症状を改善する標治薬としては、「炙甘草湯」(動悸など)、「苓桂朮甘湯」(めまいなど)、「抑肝散」(イライラなど)、「温清飲」(ホットフラッシュなど)などがあり、本治薬にかぶせて使います。

これらは、「証」が合っていれば、ほぼ二週間以内に症状の改善が見られます。

証が合っているかどうかが漢方治療の要諦で、西洋医学で診断した病名や症状だけを元に、マニュアルを見ながら対症療法的にただ漢方薬を出すだけでは、あまり効果が期待できないのはそのためです。

その意味で、漢方治療を望む場合は、きちんと証をみたうえで処方をしてくれるところかどうかを確認してから受診されるのが無難でしょう。

これは、ほかの代替療法にも共通しています。基本的に、独自の医療体系や専門教育に基づいた信頼性の高い療法であれば、西洋医学とは異なる独自の診断法があり、本人の治癒力を高めて治癒に導くためには、しっかりとそれらを踏まえた高度な専門的技術が求められる、ということです。

〇プラセンタ

プラセンタとは、胎盤のことでサプリメントと漢方生薬と注射剤とがあり、サプリメントはブタやウマの、漢方生薬と注射剤はヒトの胎盤が用いられ、漢方では「紫河車」と呼ばれています。

注射剤は日本で開発され、約60年前から臨床で用いられており、「メルスモン」というプラセンタ注射の保険適応は、更年期障害と乳汁分泌不全です。

その効果は、免疫改善作用(風邪をひかない)、抗アレルギー作用(鼻炎にならなかった)、抗炎症作用(アトピー、炎症の改善)、抗酸化作用、血流促進作用、美白など多岐にわたっています。

私のクリニックでは、以前から更年期症状の患者さんにプラセンタ注射を用いていますが、その効果は絶大で、「凄く効いている」「びっくりするほど効果があった」など、通常は聞けないような患者さんの反応が返ってきます。

プラセンタは、漢方同様、効果はあるものの作用機序がいまだ不明であることから、有効性について懐疑的な医師もいます。しかし、これも帯電障害のアーシングと同様に、実際に体験すれば、その効果を実感するでしょう。

哺乳動物の命のリレーの中でのプラセンタの役割を知れば、その効果は当然であることがわかると思います。

ここで、哺乳動物の胎盤の働きについて、少し解説しておきます。

哺乳動物では、草食動物でも出産時に胎盤を食べることが知られています。胎盤を持つのは哺乳類の特徴ですが、実は、現在は有袋類として生き残っている原始的哺乳類には胎盤がありませんでした。

有袋類は子宮の中で胎児は2センチほどになると子宮から這い出して、母親の下腹部をよじ登って袋(育児嚢)の中に移動するのです。

袋の中には胎児の頭ぐらいの大きさの乳首があり、その乳首に吸い付いて成長していくのです。つまり、乳首が胎盤に相当しているわけです。

しかし、有袋類では、妊娠初期に体外に出なければならないという、とても大きなリスクがあります。そのため、哺乳類(正獣類)は進化の過程で妊娠初期に受精卵の一部が胎盤に変化して子宮の内面にがっちり根を張り、成長に必要な栄養すべてを母親から摂り入れる仕組みを作ったのです。

要するに、胎盤は「赤ちゃんの一部」なのです。

しかしその一方で、母体にとっては、子宮の中で胎児を大きく育てることは栄養を吸い取られるだけではなく、出産時に体力を大きく消耗してしまうことになります。

そのため、出産直後に肉食獣に襲われたり、育児に支障をきたす可能性が出てくることから、そのままの状態だと非常に不都合なわけです。

そこで、母体が娩出される胎盤をその場で食べて元気になり、さらに母乳も十分出せるような仕組みにしたわけです。

このように、胎盤は哺乳動物が進化の過程で作り出したものであり、妊娠中は胎児に、出産後は母体に働くという効率的に仕組まれたメカニズムには、驚嘆せざるを得ません。

人類も以前は、このような命のリレーの中で胎盤を食していたものと思われますが、出産後の栄養摂取が良好になり、この習慣が失われたものと考えられます。

ところが、近年はこうした事実を知った妊婦の間で、胎盤を食べるというケースも出てきているようです。

このように見てくると、プラセンタが自然界における種の保存という「命のリレー」に組み込まれているからこそ、私たち人間にとっても効果が高く同時に副作用のほとんどない貴重な薬剤になっていることが理解できるのではないでしょうか。

〇バッチフラワーレメディ

バッチフラワーレメディは、花の持つ精妙な働きを感情などのメンタル面の癒しに用いる自然・植物療法の一つで、世界各地で同様のセラピーが確立されており、総称としてフラワーエッセンスとも呼ばれることもあります。

私たちの周りで常に優しく見守って支えてくれている自然界の存在が、植物です。

植物は、自然界における食物の生産者であることから、動物である人間は生存そのものが植物に依存しており、中でも特に、花は私たちを常に癒してくれる存在です。

花が持つ癒し効果については、科学的裏付けをするまでもありません。なぜなら、花を見て汚いと思う人はいませんし、花の香りを臭いと思う人はいないからです。

私たちは、無意識に花の癒しを求めて花を飾ったり、花柄の衣類を身につけたりしていますが、そのように花を癒しのツールとして暮らしの中に取り入れる習慣や伝統は世界各地に見られます。

そんな花が持つ癒しの力を現代に引き継いでいるのが、1930年代に英国の医師エドワード・バッチ博士によって作られたフラワーレメディです。

これは、水を満たしたボール一杯に花を浮かべ、雲一つない晴天の太陽の光を当てて作られるもので、花の微細なエネルギーが水に転写された朝露に近いものと捉えることができます。

西洋医学的に見ると、後述するホメオパシーと同じように、今のところは科学的な作用機序が明らかになっていない自然療法の一つではあるものの、その有効性は歴史的かつ臨床的にも明確で、すでに60ヶ国以上の国々で医師や看護師、獣医師などにも使用されており、英国では薬局などでも販売されています。

バッチ博士自身が朝露を口に含んで、ある感情の癒しを経験したように、バッチフラワーレメディをはじめとする世界各地の花々を用いるフラワーエッセンスは、とりわけ感情や認知などのメンタル面に効果が期待できる代替療法であり、実際、当クリニックにおいても、さまざまな精神的症状に大きな効果を上げています。

バッチフラワーレメディは、38種類を基本とし、それぞれがさまざまな感情やトラウマ、性格傾向などに対応しますが、当院では、不安や落ち込み、イライラ、不眠などの症状や、その根底にある性格の傾向に対応するレメディを7種類、選択調合して口に含んでもらうようにしています。

もちろん、西洋医学の薬や漢方とも異なり、化学物質が一切含まれていないので、赤ちゃんからお年寄りまでどんな人でも摂取でき、副作用や依存性もありません。

レメディを摂取するだけで、心のベールが取れて気持ちがどんどん軽くなり、誰よりも本人がその効果にびっくりします。その効き方も、花のようにさりげなく、穏やかに効いてくることが多いようです。

私のクリニックでは、外来診療の中で私が患者さんと話をしながら、患者さんに合った7種類のフラワーエッセンスを選び出し調合しています。開院以来、1000名以上の方に調合しましたが、その穏やかで優しい効き目に癒されてびっくりする方が多いです。

バッチフラワーレメディを本格的に調合している医療施設は、日本ではまだほとんどありません。しかし専門の教育機関があって、そこで資格を取得したプラクティショナーが各地にいらっしゃるので、関心のある方は、調べて相談されるのが良いでしょう。

〇気功・瞑想・呼吸法

身を修め、心を治める養生法、健強な身体づくりのために有効なものの一つが、気功です。

気功は、呼吸に意識を向け、気の流れをイメージしながら全身を心地良く動かしていく、誰でも無理なくできるものです。

基本的には、自分自身の中にある治癒力を養う「自養其生」という考え方に基づいており、意識的に呼吸を行うことによって、より身体がリラックスして気の流れを感じやすくなります。この呼吸は逆腹式呼吸で行うことが特に重要です。腹式、逆腹式呼吸ともに横隔膜の動きに重点を置く呼吸法ですが、腹式呼吸が吸気に腹を膨らませ、呼気に腹を縮めるのに対して、逆腹式呼吸は、丹田(へその下数センチの部分で気功では気の出入り口といわれている)に意識を置いて、吸気に腹を縮め、呼気に腹を膨らませる呼吸法です。逆腹式呼吸は、すべての気功や武道の基本ですが、呼吸をするたびに腸管がマッサージされて血流が増え、消化機能や免疫機能を活発化させる優れた呼吸法です。

当クリニックでは、気功や瞑想を自然治癒力を発揮させるための最高の修練法と位置づけて積極的にセミナー、セッションを行なっています。年に数回、中国から気功師を呼んで集中セミナーを開催したり、ツアーを組んで中国で医療気功体験合宿を行っています。このツアーは中国の気功に適した場の良いところで5~6名の気功師や超能力者を招いて合宿形式で集中施術を行うものです。癌を含め様々な難病に効果を上げており、現在北海道内でも同様の合宿を計画しています

また、20年前に「西野流呼吸法」と出会ったのをきっかけに、当院の気功教室で、初心者に対して西野流呼吸法の指導も行っています。

この呼吸法は、西野バレエ団を主宰する西野皓三先生が創設した気功法で、ゆっくりとした長い呼吸(足芯呼吸)をしながら身体の隅々に気を巡らせていくものです。

合気道から派生した武道を気功健康法にアレンジしたもので、短期間で気の存在を実感でき、簡単に気を巡らすことができることから、患者さんにとっても無理なく行えて、皆で楽しみながら続けることができます。

西野流の基本は「足芯呼吸」と呼ばれる逆腹式呼吸で、これは、大木が根から水分を吸い上げていくようなイメージで、足芯(足の裏)から息を吸い上げ、全身にエネルギーを巡らせた後、足芯から息を吐き出します。

この足芯呼吸だけなら10分ですむため毎日無理なく続けられるので、健強な身体づくりにお勧めです。

現在クリニックでは2つの気功教室を毎週定期的に行っています。

一つは中国気功の中でも万能気功と呼ばれている「中華養生益智功(中功)」です。これは、中国の著名な生命科学家であった張宏宝先生が考案し、体系化した気功法で、中国で最もたくさんの人間が修練し、その後に誕生した気功師の多くは、この中功を基礎として学んでいます。

当クリニックで行っているものは入門となる一部功です。ここでは、「気の出し方」(発気法)、「気の取り入れ方」(採気法)、「病気(邪気)の落とし方」を学びます。

これまで、長年にわたる患者さんや参加者の反応を見ていても、病気の人はこれだけで気功治療が完結するほど効果があり、健康な人も能力開発などの効果が期待できます。

やり方は、約50分間音楽を聴きながら誘導に合わせて身体を動かしていくのですが、膝を曲げて腰を落とし、空気椅子のような形を保つ立禅(站樁功)も含まれており、それだけでも全身の気血が一気に巡り、汗が噴き出します。

もう一つは、7年前に私が劉発祥先生から伝授を受け、札幌に紹介した「五環養生操」です。これは30分間の若返りの気功であり、髪が黒くなった、老眼が改善したなどの声が相次ぎ、現在札幌のいくつかの町内会、文化教室、東京の老人施設などで広がりつつあります。

これらの気功も、素足でやることでアーシング効果がより高まります。
ご興味のある方は、当クリニックにお問い合わせください。

気功・五環養生操(北京郊外 2010.5)

〇温熱治療室“嵐の湯”

冷えは血管の収縮をもたらし全身の血流を低下させ万病のもとと言われていますが、帯電障害では、温めると同時にアーシングをして血流を回復しなければ冷えは良くなりません。

クリニック内に設置している温熱治療室“嵐の湯”は、アーシングができる構造になっており、帯電障害に対する有効な治療法になっています。

「嵐の湯」とは、温水パイプで45~50℃に加熱した15種類の薬石に天然温泉水を掛け流し、ミネラルの豊富なミストを発生させて室温を47~48℃に保つ新しい形態の薬石浴です。薬石と温泉水に含まれる大量のミネラル成分が浴室に嵐のように充満することから、「嵐の湯」と名付けられました。この充満したミネラル成分と薬石からの遠赤外線、そして床に敷かれた玉砂利を通したアーシングにより、身体の芯から温まり47~48℃という室温にもかかわらず、大量の汗と老廃物を体外に出してくれます。入浴された方は、他の岩盤浴とは比べものならないほどの発汗量を体験されびっくりしています。

冷え症治療のほか、がんの温熱療法、アトピー治療にも用いられています。

温熱治療室 嵐の湯

おわりに