引っ越しをしてから電磁波過敏症を発症したKさん

Kさんは、40代前半の女性です。更年期相談で受診されました。

現在の症状は自律神経の痛みと、むくみ、イライラです。

家族の介護などで3年前から体調を崩し、頭痛や血流の悪さ、冷えなどで長年悩み、苦み続け、最近はだんだんひどくなり更年期障害ではと思って受診されました。

「今一番つらいのは身体の痛みで、足先から びーっと痛みがきてつらいです。また職場では、集中力がなくなって、簡単にできることができないのです。今までできたことができなくて、最近怒られてばかりで落ち込んでいます。とにかくパニックをおこしています」と涙を流しながら語るKさん。

帯電量を測定すると、滅多にないぐらいの高値です。

「これだけ高ければ、いろいろとつらかったでしょうね」

さっそくアースシートに足を載せてもらいました。

「何かビリビリとすごい電気を感じます。特に右側が…」

「それは足の血流が改善している証拠です」

「まだビリビリしてます。足が痺れた後のような」

 同伴されていたKさんのお母さんが

「いつも家で、ずっと痛い、痛いって言っています」と一言。

「今すごい身体が熱いんですよ。心臓がバクバクして汗がどっと出ました」

Kさんは身体に急な反応が出て、ちょっと驚いていましたが、しばらくするとしんみりと次のように話し始めました。

「やはり、身体がおかしかったんですね。ビックリです。先生が言ってくれたように 自分がつらいことを周りに言ってもわかってもらえず、ずっとうまくいかなかった。だから生きるのが大変でした。

よく死にたくなっていました。母にも迷惑かけるし……。すみません、少し安心して泣けてきました」

Kさんは、地下鉄に乗っても具合が悪いし、テレビを見ていても具合が悪くなっていたことから、原因がわかって本当によかったと喜びとともに安心されたようでした。

普段から、身体が冷えている、肩もひどくこっている、そして目が痛くなる。この状態は、帯電障害を超えてもはや電磁波過敏症の状態です。

Kさんはつい歯をかみしめてしまうので、歯医者に通ってマウスピース治療をしていました。

原因を探るために、Kさんがどんな環境に住んでいるのか聞いてみました。

「家の環境ですが、今のところに一年前に引っ越してきました。母と同居できたのはよいけど、すごく具合が悪くなりました。交通の便のいい大きな通りに面しています。

マンションの2階で、下が飲食店です。看板の光もきついので、引っ越しをすることも考えているところです」

続いてお母さんが次のような質問をしてきました。

「今のところに越して来てからひどくなって、動けないみたいなんですが、そういうことも関係あるんでしょうか?」

「部屋にいると下からジンジン痺れるような感じで、ジ゙ージーとしてきます。今日、引っ越しの仮契約をしたところです」

Kさんのように、引っ越しをしてから体調が悪くなったという人は、最近かなり見受けられます。これは、引っ越して来たところの電磁波環境が帯電障害の原因となっている可能性が高いことを示しています。

Kさんの次の引っ越し先の電磁波環境を調べないと、さらに体調が悪くなってしまいます。そこで、当クリニックの帯電障害・電磁波過敏症相談室の上村育子電磁波測定士に、Kさんのお宅と引越し予定のマンションを訪問して調べてもらいました。以下はその報告です。

『はじめにご本人のご住まいに連れて行ってもらいました。場所は交通の便が良く、地下鉄駅のすぐ傍で、店舗の2階でした。部屋の電場計測値は200~300 mV/mで、それほど高くありませんでした。

しかし下の店舗の蛍光灯の影響か、床からの低周波が非常に強く、私の足がビリビリし、こむら返りで痙るほどでした。ここでは、アースシートで身体に溜まった静電気を抜いても追いつかないくらいの強さだったようです。

次に引っ越し予定のマンション7階のお部屋を訪問し、電磁波測定をしてきました。

周辺は平屋ないし3階建てぐらいの低い建物ばかりで、そのマンション一棟だけが背の高い環境でした。Kさんは入っただけで、かなりきついと感じたそうです。

リビングの大きな窓の正面から100mぐらい離れたところにあるビルの屋上に、携帯電話会社三社の基地局発信塔が並び、その影響でKさんの身体もビリビリする状態です。測定値はどの部屋も110mV/m~600mV/mで、電磁波過敏症の人が住める環境ではありませんでした。本人が引っ越しをキャンセルして事なきを得ました』

こうして、危うくKさんは難を逃れました。

結局、その後、上村がKさんと一緒に電磁波の影響の少ないマンションを探し当てて、そちらに引っ越されました。

それからKさんは、目に見えて体調が良くなったと喜んでいました。

では、最後のケースは上村に実名で登場してもらいます。