帯電障害のメカニズム

ではなぜ帯電が進むと身体の不調がおきるのでしょうか。

残念ながらはっきりとした科学的な仕組みについては、まだわかっていません。

しかし、それが自律神経などに悪影響を及ぼして、さまざまな症状を引き起こしていることはご理解いただけたと思います。

帯電すると、どのような変化が表れるのでしょうか。私は次のように考えています。

第一に、帯電による電気刺激は、交感神経を過剰に刺激し続けます。

このため、全身の血管が収縮します。すると当然、血流が悪くなり、脳をはじめ各臓器へのエネルギーの補給が不十分となり、ひどい疲れやだるさ、記憶の減退などが起きるのです。

また、特に血流が悪くなると末梢に血液が行き渡らなくなり、常に冷えを感じます。

しかも、少し温めたくらいでは帯電により収縮した血管が拡張しないため、頑固な冷えの状態が続くのです。

さらに血流が悪くなると、あちこちの筋肉が突っ張って、こりと痛みを生じます。代表的なのが肩のこりで、それは肩の痛みと後頭部の頭痛に繋がります。

この緊張の持続は、夜間の歯の食いしばりや、耳の管の狭窄による耳の閉塞感も生じます。

脳には140億個ものニューロンという神経細胞があって、複雑なネットワークを形成し、電気信号(パルス)で瞬時に情報を伝達することで体内のさまざまな器官を総合的にコントロールしていますが、同じように、心臓も電気信号が心筋に伝わって心臓が拍動しています。

その電気信号に不具合が生じると、血流量が減ってさまざまな問題を引き起こすわけですが、電磁波過敏症の患者さんは脳の血流量が少ないことがわかっています。

北里研究所病院臨床環境医学センターでは、血流量と電磁波の影響についての調査を行っていて、16ヘルツから1メガヘルツ(100万ヘルツ)まで5通りの電磁波を発生させて体の変化を測定したところ、電磁波過敏の自覚症状のある人の血流量は、健常者に比べて最大40%減ったと報告しています。

血液が滞ることを東洋医学では「瘀血」といいます。「通則不痛、不通即痛」(通じれば即ち痛まず、通じざれば即ち痛む)といわれるように瘀血になると痛みが生じるのです。そして瘀血は万病の元と言われ、瘀血による症状が進行すると生活習慣病などの原因となります。

また、忘れてはいけないのが、帯電により空気中の塵や埃が目や顔を中心として身体に絶えず吸い付いてくることです。このため目がしょぼしょぼしたり、乾燥したりするようになります。

加えて、帯電によってカルシウムやビタミンCが流出しやすくなることから、その結果、貧血や皮膚病に罹患したり、ストレスが溜まりやすくなります。

ビタミンCは抗酸化の働きがあり、それが失われると活性酸素が増え、細胞の老化(劣化)を招きます。

このような、さまざまな問題を引き起こす帯電障害ですが、これが進行すると、「電磁波過敏症」になります。

電磁波過敏症とは、わずかな電磁波でも身体が過敏に反応するようになり、だるさ、頭痛、めまい、吐き気、不眠などの症状が出るようになることです。

こうなると、現在の社会環境の中で生活を送ることが非常に困難になってしまいます。電磁波過敏症については後述しますが、ここまで重篤になると治療も簡単ではありません。