うつ病と診断され退学したBさん

ある日、外来に19歳の女性Bさんが母親に伴われてやってきました。

ややうつ向き気味で顔色も悪く、いかにも体調が悪そうです。

「とにかく疲れやすく、だるくてなにもできず、家にこもっているのです」

心配そうに母親が話し始めました。

「以前、私が先生のところでお世話になったので、もしかしたら娘の体調不良もなんとかしていただけるのではないかと連れてきました」

私のクリニックでは、統合医療を行っていることから、「ここならなんとかなるかも…」と娘さんを連れてやってきたわけです。

「娘は専門学校に行っていたのですが、だんだん具合が悪くなり、家に帰ると何もできない状態でした。内科で血液検査をしてもどこも異常がないと言われました。

それでメンタルクリニックを受診したらうつ病と診断されました。

抗うつ剤を処方されましたが、却ってボーッとしてしまって、むしろ悪くなったような気がします。

まったく学校に行けなくなってしまったので、学校と相談して退学の手続きをしてきたばかりです」

道理で元気がないわけです。

「いつから体調不良になったのですか?」

「病院での実習が始まってからです。家に帰ってくると、とにかく疲れて動けなくなるのです」

 そこで、次のような質問をしてみました。

「冷えはありますか?肩こりや頭痛はどうですか?」

 すると、Bさんは冷えに一番強く反応しました。

「とにかく足が冷えます。お風呂に入っても、すぐに冷えてしまいます。夜も靴下を履かないと眠れません」

「目はどうですか?」

「はい。乾燥しやすくて、いつもしょぼしょぼしています」

この時点で、ほぼ帯電障害は、間違いなさそうです。

「では、スリッパを脱いで、ここに足を載せてください」

と、アースシートに足を載せてもらいます。

「それでは、身体に溜まった電気を測りますので、まず両足を上げて床から離してみてください」

身体の帯電量を測ると、やはり高値でした。

「これはやはり、かなり高いですね」

Bさんは怪訝な顔をしています。

「では、足を布に置いてください、これはアースシートと言って、身体の電気を流すシートです」

Bさんが足をアースシートに置いた途端、測定器の目盛りは見る見るうちに下降していきます。

「いまは身体の静電気が抜けている状態ですので、足の裏に何か感じたら教えてください」と言いながら、「帯電すると身体の血流が悪くなり…」と説明しかけると、

「先生、足がピリピリします」とBさん。

「そうでしょ! それは足の末端の血管に血が流れ始めた証拠です。

身体の電気が溜まると交感神経が優位になって、血管が収縮して血が流れないのです。」

そうしているうちに、

「ピリピリがだんだん上がってきました。身体が温かくなってきました。汗ばんできました」

Bさんの土気色だった頬が、上気してほんのり赤くなってきました。

「先生、身体が楽です、肩が軽いです!」

「今までの生活環境で電磁波をたくさん浴び、その影響で身体に電気が溜まりすぎたのですよ」

Bさんは涙を流し始めました。それまでよほど身体が苦しかったのでしょう。

その涙には、原因がわかった安堵感と、今までのつらかった想いが錯綜しているのがわかります。

お母さんはキョトンとした表情で、何が起きているのかわからないようだったので、今度はお母さんの身体に溜まっている静電気を測定しましたが、お母さんはやはり正常でした。

これで娘さんの症状が帯電によるものだったのだと理解されたようでした。

「学校辞める前に、娘を連れてくれば良かった……」と言いながら、お母さんも涙ぐみました。

前へ
次へ