私たちは、母親から生まれた時、すべての細胞は生き生きと活動しています。つまり健康に生きるように私たちは生まれてきたのです。
それが生きていくなかで、さまざまな内的、外的ストレスを受けて身体のバランスが崩れて行きます。ストレスは、人によって感じ方や影響の現われ方が異なりますが、ストレス要因(ストレッサ―)としては、主に次の5つに大別されています。
・温度、光、音、電磁波、放射線などの物理的ストレッサー、
・タバコ、アルコール、化学物質、食品添加物などの化学的ストレッサー
・細菌、ウイルス、カビ、花粉などの生物学的ストレッサー
・不安、不満、怒り、喜び、悲しみなどの心理的ストレッサー
・家庭や職場、学校、地域、住環境などの社会的ストレッサー
ここで空のグラスをイメージしてみてください。ひとはそれぞれ容量の異なるグラスを持っているのです。先に述べたストレッサーによるストレスがグラスの中に注ぎ込まれていきます。グラスの一定の許容量までは身体は何事もないかのように持ちこたえることが出来ます。
しかし、許容量を超えると一気にグラスから溢れ始めます。これが病気のはじまりなのです。まず初めは、疲れやすさ、だるさとして自覚されます。そして無意識下に自動的に身体をコントロールしている自律神経のバランスが乱れます。自律神経は、文字どおり交感神経(緊張)と副交感神経(緩和)を自律的に制御しながらバランスを取っているわけですが、ストレスが大きいとそのバランスが崩れて、動悸(心拍機能)、ほてりや冷え(体温調節機能)、めまい(均衡作用)、血圧異常や立ちくらみ(血圧調整)といった自律神経の失調症状が出てくるのです。同時に気持ちがしずむ、何もしたくない、いらいらしやすくなるなど、心のバランスが乱れてきます。
ここで注意して欲しいのは、原因となるストレスが何であれその症状は同じであるということと、この時点では、明らかな検査値異常として現れてこないということです。
逆にいえば、この時点であれば比較的簡単に治ることが可能なのです。
しかし、この状態を放置していると次第に、身体の臓器がむしばまれてきます。潰瘍、リュウマチ、膠原病などさまざまな臓器に異常を来し、検査値にも明らかな異常として認識されてきます。
ここでもう一つ明らかにしておきたいのは、ここで出現する臓器の異常は、原因となる個々のストレスによって決まるのではなくて、それぞれ個人のもともと弱い臓器に現れると言うことです。ですから、症状をいくら追求しても原因は明らかにはなっては来ないのです。
西洋医学では、病気の原因を個々の臓器、細胞、分子の中に探します。
これは、ペニシリンといった抗生物質の出現が一世を風靡したときの名残で、病人全体をみるのではなく、病変だけを細かく分析するため、要素還元主義とも言われます。
つまり、症状を手がかりに、原因となるものを細胞、分子レベルで見つけ出し、それを叩くわけです。
しかしその後さまざまな内外のストレスが強くなるに従い、さまざまな症状がでるものの原因がわからない疾患が増えて来ました。
ちなみに、厚生労働省が2012年に行った労働者健康状況調査によると、「仕事や職業生活でストレスを感じている」と答えた人の割合は60.9%で、多くの人が何らかのストレスを抱えていることがわかります
そして原因が一つだけではなく複雑に絡み合っているため、症状も多彩であり、症状ごとに分類し名前をつけるため、なになに症候群という病名がどんどん増えてしまいました。
この本のテーマである帯電障害は、物理的ストレッサーですが、他のストレス要因との総和で病気の原因となるのです。
しかし、現代社会におけるさまざまな病態に関しては、一つの原因だけで発症することはなくなりつつあります。本人のストレス度や精神状態、生活習慣なども大きな要因になっているからです。
感染症にしても、感染した菌が原因ではなく、身体の自然治癒力の一つである免疫力が落ちたため感染が起きたのです。
最近では分子レベルや遺伝子レベルでの異常を見つけることが出来るようになりました。そしてそれぞれの部分に働きかける薬が作り出されて効果を上げつつあります。しかし、これらも病気の根本的な原因ではなくて、外的、内的ストレスにより遺伝子や分子レベルで引き起こされた結果なのです。
結果で結果を治療しようとしてもそこには無理があるのです。ですから本来の治療は真の原因にアプローチすることです。
総じて言えば、「自然治癒力の低下」が病気の本当の原因とも言えるわけです。