や欧米では健康管理のために血圧測定と同様に、多くの人たちが毎日身体の帯電レベル(身体電圧)をチェックしているのに対して、日本では電磁波が人体に悪影響を与えているという「確かな証拠はない」というのが政府の公式見解なので、一般の人たちもほとんど注意を払っていないのが現状です。
ほかの先進諸国の取り組みに比べ、日本の電磁波対策は、残念ながら首をかしげざるを得ないのが実情です。
日本では、人体に対する規制はICNIRPの緩いガイドラインを採用しており、
高圧送電線や電化設備などの低周波磁場(界)については、
東日本は100μT、
西日本は83.3μTを採用しています。
この数値は、小児白血病や脳腫瘍の発生が疑われる数値(0.3~0.4μT)の200~300倍も緩い基準値となっています。しかも超低周波の磁界の強さについての規制はありません。
また高周波(電波)に関しては、電力密度を最大1000μW/cm2(1mW/cm2)まで認めて
いますがこの数値は、世界の厳しい基準値やガイドラインと比べて、500倍~1000万倍も緩い基準値となっています。
高周波規制値各国比較表 | |||
国名(地域名) | 電力密度(μW/㎠) | 電界強度(V/m) | 備考(周波数・他) |
イタリア | 10(学校、幼稚園、病院の新設で) | 6(学校、幼稚園、 病院の新設で) | |
ポーランド | 10 | 7 | 制限なし |
ロシア | 10 | 制限なし | |
ギリシャ | 600(感受性の高い学校等で基地局から300m以内) | 47(感受性の高い学校等で基地局から300m以内) | |
ブルガリア | 10 | 制限なし | |
リトアニア | 10 | 制限なし | |
スロベニア | 100(住宅、学校、病院、公園、公共建物保養地等で適用) | 19(住宅、学校、病院、公園、公共建物保養地等で適用) | |
スイス | 6(人が長期間滞在する建物や遊び場で適用) | ||
リヒテンシュタイン | 0.1 | 0.6 | 2013年より適用 |
ベルギー | 31 | フランダース地方(首都ブリュッセルは4.5V/m) | |
ザルツブルク州 | 0.1 | 0.6 | 屋外勧告値は0.001μW/㎠ |
パリ市 | 1.06 | 2 | ただし24時間平均値 |
フランス | 1000 | 61 | |
日本 | 1000 | ||
欧州各国は2100MHz(2.1GHz)。リヒテンシュタインを除いて2011年4月現在 |
なぜこのような大きな差があるかというと、一つの理由としては、電磁波の健康障害を調べる観点や基準が、電磁波の熱作用だけに着目しているからです。
熱作用とは、身体に吸収された電磁波が熱を出すことで、携帯電話や電子レンジなどから発せられる高周波(マイクロ波)によって、人体の熱に弱い部位が発熱するリスクがあるのではと考えられていることから、主に電磁波の健康障害は熱作用によるものを中心に考えられてきたのです。
したがって、総務省は、「携帯電話端末から発射された電波のエネルギーの一部は、人体に吸収され熱になりますが、定められた基準値(局所SAR)を超えなければ人体に悪影響はありません」との見解、立場を取っています。
ところが、問題は熱作用だけではなく、高周波による非熱作用による影響があることもわかってきていて、非熱作用こそが電磁波問題の核心と捉えて警鐘を鳴らしている研究者も少なくないのです。
また、超低周波の害についても各機関の研究によって問題視されています。
IARC(国際がん研究機関)では、平均4mG (ミリガウス)以上の低周波磁界の環境では、小児自血病の発症が2倍ほど増えるという疫学調査の結果に基づいて、「低周波電磁界(場)はヒトに対して発がん性の可能性あり」に分類しています。
そのため、ICNIRPにおいても、電磁界の健康影響に関する世界中の研究動向を精査して、ガイドラインの根拠や限度値の見直しが必要かどうかの検討を継続的に行っています。
ところが、日本の国の基準では、電磁波の熱作用だけを安全の根拠にしていて、高周波については一定の基準が定められているものの、高圧電線や家電製品などの超低周波については、いまだに磁場規制がされていません。
ほかの先進国では、国民の安全と生命を第一に、「安全が立証できなければ危険」と考え、予防的措置を施すようになっているのに、日本では「危険性が立証できなければ安全」と考える傾向が強いからです。
しかも、たとえば、日本の電気供給は100Vで、1,000Wのコンピュータを使う場合、220Vの国よりも電流が2倍以上となり、そのため磁場も2倍以上生じています。
220Vの国では電場を外に出すためのアースが義務付けられているのに対して、日本では、100Vでもアース設置が義務づけられていないため、電磁波の影響を受けやすい環境に置かれています。
いずれにしても、電磁波の人体への影響はまだわからない点が多いことから、少なからずリスクがあるとの前提に立った対策が求められます。