WHO(世界保健機関)やICNIRP(国際非電離放射線防護委員会)では、電磁波の健康に対する影響を防ぐための一定の基準が設けられています。
しかし、電磁波の影響は未知の部分も大きいため、欧米諸国ではその基準よりもさらに厳しい規制を行っている国が多いようです。
以下に一例を挙げます(参考文献:『生体と電磁波』丸善出版)。
・スウェーデンでは、磁界0.2~0. 3μT(マイクロテスラ)を目安に、小学校や幼稚園付近の鉄塔を撤去や移転。住宅密集地近くの送電線の撤去などを地域の中で行っている。長時間にわたる環境被爆制限の0. 4μTに制限して、これに伴い送電線から140メートル以内の住宅建築を制限している。
・イタリアでは、小学校や幼稚園で磁界を0.2μTに規制。スウェーデンよりも厳しい規制値を採用しており、乳児や幼児保護を重視している。
・アメリカは、州ごとに磁界の規制があり、0. 4μTの独自規制(鉄塔付近などに学校を造らないなど)を行っている州が多い。
・スイスでは、規制値以外に住宅、病院、学校などの特に防護が必要な場所においては磁界の規制値を設定し、スウェーデンの規制方針に従っている。
・オーストリアのザルツブルク州では、学校や幼稚園では無線LANやデジタル式コードレス電話を使ってはいけないという公式文書を発表。
・オ-ストリアの災害保険機関AUVAが、2009年7月に発表したレポ-トによると、携帯電話からの電磁波は、脳の中枢神経システムや免疫システムやタンパク質合成に影響を与えるという研究結果を出しています。
・オーストリア保健省は、このレポートの研究結果にすぐに反応し、今回の勧告は子供たちに特に重要であるとの認識に立って、保護者に対して「この勧告についてお子さんたちと話し合ってください」との親へのアピールを行なったそうです。
また、WHOの外部組織である国際がん研究機関(IARC)は、2011年に、長時間にわたる携帯電話の使用が脳腫瘍のリスクを高める可能性は否定できないと発表したことから、欧米諸国では超低周波磁場の被爆量を減らすための対策も取られるようになり、妊婦と小児に対して携帯電話の使用制限の勧告を行っています。
・フランスでは、イヤホンの使用によって携帯電話を頭部に密着させるのを防ぐように勧告し、12歳以下の小児向けの広告の禁止、6歳以下への携帯電話の販売禁止を立法化。
・アメリカでは、米国食品医療品局(FDA)が携帯電話業界に対して、使用者への電波の曝露を最低限にするように要請。
・イギリスでは、16歳未満の小児には携帯電話の使用を控えるように勧告。
・ドイツでは、小児と妊婦に対して携帯電話の使用制限を始動。
・カナダでは、8歳以下の小児は緊急時以外携帯電話を使用してはならず、10代は携帯電話の使用時間を10分までと勧告している。
・ロシアでは、18歳以下の青少年、神経疾患、その他脳神経系に疾患の可能性のある者は携帯電話を使うべきではないと勧告している。 ・韓国のソウル市では、小学校では携帯電話の持ち込みを禁止。中高等学校では登校時に携帯電話を集め下校時に返却する。その理由は、勉強と健康の妨げになるから。