3月16日のホロトロピック・ネットワーク札幌の講演会で、高濃度ビタミンC点滴療法の話をしたところ、参加されていた会員の方が、「実は25年前、膵臓癌の父がこの治療をして効果を実感しました。」と話され、そのシンクロニシティーにびっくりしました。是非その状況を詳しく聞かせてほしいとお願いし、次のような手記をいただきました。(院長)
父は25年前、末期の膵臓癌であと3ヶ月と告知されました。今思うと、私たち家族が最も望んでいた「最後まで痛みで苦しまないこと」を成し遂げたことが最大の成果でした。
告知の時、当時の病院の院長は奥様をガンで亡くされたこともあってか「今後は後悔の無いようにご家族の望むような治療をします」。とおっしゃっていただきました。
そのとき家族としてはいったい何をしたらよいかまったく見当もつきませんでした。しかし、父のためにできるだけのことをしてあげたいと考えた母は、昼間の父の付き添いから帰ってきてから、夜な夜な医学書や論文を必死に読みあさりました。その量はかなりなもので娘の私も母のただならぬ熱意に驚きました。そしてようやく行き着いたところが、ポーリング博士の提唱されたビタミンC点滴療法だったのです。
院長にはあのようにおっしゃっていただいたのですが、実際ビタミンC療法を始めるのは大変でした。父の主治医の若い先生は、当初は「患者さんが言っただけで、その治療をする訳には行かないです。僕は医者です。根拠となるデータを持ってきてください。」と言われました。そこでアスコルビン酸の論文を書いていた札幌医大の先生にお願いし、直接主治医の先生に会って説明していただき何とか納得してもらいました。
ビタミンC療法が始まり、父は12月には自宅に戻りベッドの上でしたが普通の生活ができるまでになりました。その頃のエピソードで思い出されることがあります。クリスマスの日、家族が買い物に夢中になり、近所の病院で点滴をしていた父を迎えに行くのをすっかり忘れてしまったのです。そうしたら何と、父がぷんぷん怒りながら一人で歩いて家に帰ってきたのです。徒歩で15分くらいですが、なにせ今まで車椅子の生活をしていたので家族は皆、本当に驚きました。それから、「氷柱がきれいだね」とか「クリスタルの花瓶が朝日にあたると、とても綺麗だよ」などと家族と会話をしながら、とても穏やかな時間が過ぎていったのを今でも鮮明に思い出します。
しかし、2月に肝臓への転移が原因で高熱が出て再入院となりました。ビタミンCの点滴をしている間、一度、腸から出血したことがありました。まわりの医師から“こんな治療をして、ホラ見たことか”のようなことを言われた若い主治医は急に不安になり点滴を中止してしまいました。しかし、ビタミンCの点滴を止めた途端に、父は激しい痛みで苦しみはじめました。モルヒネの量を増やし2時間おきに注射してもまったく効かないのです。見かねた母が“ビタミンCの点滴をしていて痛みが激しいのなら仕方ありませんが、そうでないのですから、出血性ショックで亡くなっても構いませんから、ビタミンCの点滴に戻してください。”と必死に頼み、再び点滴をすることになりました。不思議なことにそれからはまた痛みが嘘のようになくなりました。
あるとき、主治医の先生が「最も副作用の少ない抗がん剤を使ってもいいですか」とおっしゃったので、これまで協力していただいた先生の頼みなので母は承諾しました。これまで大して効かなかった抗がん剤でしたが、ビタミンCとの併用のせいか「今まで血膿のような腹水が続いていたのに、今回はきれいな澄んだお茶のようになった。こんなの初めてだ」と、主治医の先生が驚いて報告しに来てくださいました。
しかし、とうとう癌の告知から6ヶ月後の4月22日、本格的な春を目前にして父は亡くなりました。幸い、亡くなるまで激しい痛みはありませんでした。患者の希望する医療に理解を示された院長、又心ある治療を実践してくださった若い主治医の先生には本当に感謝しており、いまでもその気持ちはかわりません。
私たち家族がポーリング博士の論文で関心を持ったのは
1. ガン特有の憂鬱な気分を抑制すること
2. ガンの痛みの緩和
3. 抗がん剤との併用で副作用を抑える。相乗効果が期待できる
という点でした。
併用効果については強い抗がん剤を使用しなかったので何とも言えませんが、痛みの緩和という最大の目標を制することができて、本当によかったと思っています。
ガンを治す医師の立場からすれば、今回のビタミンC療法はガンが消えたというような画期的なことではないかもしれません。しかしガンの痛みで苦しまないことでどれほど本人も家族も救われたか計り知れないものがあります。その点を是非ガン治療に携わる先生方に考えて欲しいです。父を看病する中で感じたことですが、ただ延命ということだけでなく、患者の気分をよい状態に保つこともとても大事であり、なるべく病気であることを忘れる状態にもっていきたいと思うのが、家族としての心情だったと思います。
ビタミンC療法は、優れたサポートだと思います。私の父の個人的な症例ではありますが、もし参考にしていただければ幸いです。
追記 これを読まれた方は 患者不在の治療となった様に思われるかもしれませんが、実は 父は肉親がガンで激しい痛みと苦しみで亡くなったのを見ており、その為 恐怖心が尋常ではなく、到底自分でその病名を聞くことすらできませんでした。それで、病院の院長に“私の妻はなにを聞いても驚かないタイプなので、どうぞ真実を言ってください”とお願いしました。この事があって、ことの是非は別として 治療法は医師と母に全託されることとなりました。
( T.O 2008.4.11 記)
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