このコーナーは、響きの杜クリニックに通院されている方の声を紹介していきます。
第1回目にご紹介するのは、現在24週の妊婦さんの声です。
1. 西野流呼吸法に出会うまで
30歳は実父の癌発覚からスタートしました。その後、看病、実父の死、実母との同居、転勤と慌しくあっという間に数年が過ぎていきました。父の一周忌を過ぎ、新しい生活に慣れた頃から、本格的に子どもが欲しいと思うようになりました。この頃、ある産婦人科病院に行ったのですが「30も過ぎて専業主婦で、結婚して何年にもなるのに今まで真剣に考えてこなかったなんて信じられない。今すぐにでも不妊治療を始めたほうがあなたのためだ」と言われて、この数年を振り返って酷く落ち込みました。友人間でも治療に通う子が増え始め、時間はたっぷりあるのに、積極的に動かない私は、「子供がいなかったらお気楽に暮らせるものね」と言われることもありました。悪気がないとはいえ、同世代からの言葉によってはたびたび暗い気持ちになりました。
不妊治療に踏み切れなった理由は、「今の世の中は、欲しいと思えば、たいがいのものは手にはいるようになったけれど、子供だけは違うのではないか」という気持ちがずっとあったからです。「子供は授かり物。私たちの元へ来てくれることがないのなら、それが私たちの人生ではないか・・」という、自分の気持ちを捨てて、不妊治療を始める気持ちにはどうしてもなれませんでした。結婚して、子供を作って一人前。それは本当にその通りだと思います。でも、どんなことも人生で思い通りにいくことはないし、それぞれいろんな選択があって当たり前だと思うのです。でも周囲に話すと「今の時代、そんなきれいごと言ってないで。いい病院教えてあげるから」と言われてしまいます。「どうして、この気持ちを認めてもらえる世の中ではないのだろう。私の考えは時代にあっていなくて、古いのだろうか」と思う日々が続きました。そしてもうひとつ、自分の性格上、不妊治療をしだすと脇目もふらずにそのことだけに集中してしまうだろうと、容易に予想がついたことでした。スムーズにできた場合はいいけれど、うまく進まなかった場合、主人にもきっと負担をかけ、情緒不安定になっていく自分を想像すると怖かったというのも正直な気持ちです。冷静に考えると、主人とは喧嘩しつつも10年近く仲良く暮らし、同居した実母と主人の仲も非常に良好。今以上に何でも欲しいと欲張って、今の幸せを見失うようになったとしたら・・・。気持ちは揺れながらも、このふたつが積極的治療に踏み切れなかった大きな理由です。
この間、主人は一貫して「授かりものなのだから、我が家は治療の必要なし」というスタンスでした。普段は非常に忙しい人ですが、長期の休みには旅行に連れて行ってくれたり、たまに飲みに連れて行ってくれたりと、夫婦二人でも楽しく暮らせるんだから心配することない・・・ということを実践してくれているようでした。
もともとおしゃべりな夫婦なので、普段から子供のことを含め、よく話し合っていたというのもよかったのだと思います。いろいろな人の話の中でグラグラと揺れていた私だったので、彼の考えが一度もぶれずにいてくれたというのは、とてもありがたいことでした。
2. 響きの杜クリニックに通おうと思った理由
厚生病院で子宮癌健診を受けていたので、先生のことは知っていました。大きな病院だったので、ゆっくりお話したことはありませんでしたが、「この先生だったら、もしかしたら私の話を理解してくれるかも・・・」という気がしていました。とある日、偶然クリニックをみつけホームページを探して見てみたら、やはり自分にはあっているのでは・・・と思ったので受診することにしました。とにかく、専門家の話をきいてみたい、自分のからだの中もきちんと知っておきたいと考えていました。
初めての受診のことははっきりと覚えています。繰り返しになりますが、今までいろんな人に話しても、主人以外は「何をのんきに。30も過ぎてるのだから、ごたごた言わずに不妊治療したらいいのに」という雰囲気で、理解してもらえることはほとんどありませんでした。でも、先生に肯定してもらえたことは「自分の考えはおかしくはなかったんだ。そういう考えもあっていいんだ」という大きな自信になりました。それまでは「40歳を過ぎた頃、自分のこの考えを押し通してよかったと胸を張って言える自信があるだろうか」と悩むこともありましたが、先生とお話したことで「これが私の考え方。私たちが選んだ道」と、周囲にもはっきり言えるようになりました。
またクリニックに通っているというと、周囲も「何も考えてなかったわけではないんだね」と見てくれるようになり、精神的にも非常に楽になりました。
3. 西野流呼吸法との出会い
西野流呼吸法との出会いは、受診の時に先生に薦められたことがきっかけです。体を整えるということにちょうど興味を持っていたときだったので、お稽古事のような気軽な気持ちでスタートしてみようと思いました。
始めて10回ぐらいは、ただまねているだけで、正直何がなにやら、よく分かりませんでした。初回から変わったと感じたことは、呼吸法を終えて車のバックミラーで顔を見たら、全体的に筋肉が上がっているように見えたことくらいです。数回たつと周囲には「姿勢が違ってきた」などと言われてはいましたが、あまり実感はありませんでした。それが多分10回を越えたあたりから、自分の中できづくような変化が出てきました。PMS(特にめまい)がすごく少なくなり、肩こりも軽減しました。一番大きな変化は、気持ちの大きな揺れが激減したことです。以前はどちらかというと、物事を突き詰めてしまい、真剣に考えてしまうたちでしたが、小さなことにくよくよしていない自分に気づいたときはびっくりしました。妊婦さんを見たり、友達の妊娠を聞いても素直に「いいなー、よかったね!」と声に出せるようになっていました。
半年を過ぎた頃からは毎回、呼吸法の度に違うこと(気が上がっていくときににゅるにゅるした感じとか)を少しづつ時間できるようになり、俄然楽しくなってきました。対気で走り回ったあとは、いろんなことがどうでもよくなり、爽快な気持ちを感じるようになっていました。一緒にお稽古している方々も和やかで、ちょっとした雑談の中にも楽しさがあって、皆さんに会うのも楽しみになってきました。お稽古事は続かない出不精な私が、少しお休みすると「今日こそは必ず行くぞ!」と朝から決意するようになっていて、それが本当に不思議だなぁと、今も思っています。呼吸法を始めたら、自分の体を大事にすることにとても興味が出てきて、体を冷やさないように気をつけたり(お稽古中にいろいろ教えてもらったりしました)薬に頼らないで生活できる体を作っていきたいと思うようになりました。長年胃腸が弱く、10代から20代にかけては入退院を繰り返していた時期もありましたが、呼吸法を始めてから、胃薬を飲むこともほとんどなくなりました。これは嬉しいおまけでした。
4. 最近のこと
当初の目的をすっかり忘れ、呼吸法は楽しいから通うようになっていました。少し疲れたり、肩こりしたりすると、「早く呼吸法に行ってすっきりしたい!」と思うようになりました。なので、妊娠を知ったときは「へぇ? 本当ですか?」という感じで、こんなに早くとは全然思っていなかったのでびっくりしました。もちろん、すごく嬉しかったですが。すごく可笑しかったのは、親しい友人たちに妊娠を話した時全員に「通っていた西野流呼吸法?それのおかげだね!」と言われたことです。自分としては、さほど熱く語っているつもりはなかったのですが、いつも楽しそうに話していたそうです。また、高校時代からの一番の友人(元看護師で3児の母)に「西野流に通うようになって、明らかにあなたが変わっていくのが分かった。最近はキラキラしたものが見えていたから、きっと妊娠すると思っていた」と言われたのもびっくりしました。
まだ今は、妊娠したばかりで大きく実感はありません。思っていたより自分が先行きを不安がっていないのは、西野流呼吸法のおかげなのかなぁと思います。とにかく、新しいスタートラインに立てて良かったと心から思っています。悩んだ時期を振り返ると、「ああして悩んだからこそ、響きの杜クリニックと西野流呼吸法に出会えたのだ」と決して無駄ではなかったと感じています。そして、クリニックとの出会いを考えると、「子供ともやっぱり時期があって、今出会えたんだなぁ」と思います。呼吸法との関係は、きっと切っても切れない関係になっていくのではないかなぁと感じています。ずっと呼吸法をしていない自分というのが、想像がつかないし、心身のバランスと自分自身がより充実した日々を送れるように、続けて行きたいと思っています。(2007.11.05 記)